時間SFの基本的アイデアと物語パターンを整理して批評性をあぶりだす。
古今東西で描かれてきた時間SFを200作品以上読み解きながら、基本的なアイデアと物語パターンを整理して紹介する。タイム・トラベル、タイム・スリップ、並行世界への跳躍、自己の重複、枝分かれする世界、ループし反復する時間……。作品がもつその独特の時間世界を理解したうえで、諸作品を深く読み込み、時間SFのシニカルさやアイロニーがもつ魅力を抽出する。時間SFの物語に接したときのめまいや混乱、その向こうにある未来が裏切られ、事態が空転し、時間が停滞・凍結する感覚――閉塞感が漂う世界でそこから脱出し、あるいは状況を突破しようとする時間SFが、現代の時代感覚に確かな手触りを与える批評性を秘めている事実をあぶりだす。

定価 3,240円
244ページ