十八歳になったら、彼女は帰ってしまう。
私の本当のおうちはとっても遠いの。それは地球の裏側よりももっと遠く、人類が持てる技術をすべてつぎ込んでやっと到達できるくらいの場所。でも、大人になったら帰らなきゃいけない。十八歳の誕生日には火星に帰らなきゃ――。自称火星人の女の子が転入してきた。彼女の名は佐伯尋。とんでもキャラでクラスから浮きまくる佐伯さん。でも、僕はそんな彼女のぽつんとした背中が気になってしかたがない。僕は佐伯さんと下校し、太鼓をたたき、星空を見上げ、彼方の火星に思いを馳せる。サインコサインタンジェント——夏休みの補習で、先生が呪文を唱えると、世界はぎゅるぎゅるぎゅると回り出した。切ない青春物語。

火星の話
小嶋 陽太郎
KADOKAWA/角川書店
2015-04-27
定価 1,512円
302ページ