彼女の胸底には、分裂した四つの人格を抱えて生きる深い懊悩が隠されていた。
丘の頂に立つ四阿(あずまや)に宿った魂である〈私〉は、ここを訪れる者の疲弊した心を、夢見の術によって癒す能力を備えている。新緑の頃から四阿に現れるようになった一人の娘。忘れてしまわなければ生きられぬほどの苦悶を押込めた巨大な箱を、心の奥に潜めたまま……。二つの大震災、記憶と忘却の間に、魂の救済を見出す長篇小説。

夢見の丘
田野 武裕
新潮社
2014-09-30
定価  1,728円
158ページ