かつての賞作家・津田伸一は、無店舗型性風俗店の送迎ドライバーとして暮らしていた。ある日、明け方のドーナツショップで知り合った男が、その日の夜を境に妻と幼い娘ともども失踪するという事件が起きる。家族三人の「神隠し」事件から一年二ヶ月が過ぎた頃、以前から親しくしていた古書店の店主の訃報とともに、津田伸一のもとへ形見のキャリーバッグが届けられ、中身には三千枚を超える一万円札が入っていた。しかし理髪店で使った最初の一枚が偽札であった。警察、裏社会に追われることになる……。忽然と姿を消した夫婦と娘、郵便局員の失踪、疑惑つきの大金、そして「鳩」の行方……多くのひとの人生を大きく左右する二月二十八日の交錯が、たった一日の物語となって雪の夜に浮かびあがる。 ● 小学館 予価 各1,998円 

☆ 著者の他作品
ふくわらい
西 加奈子
朝日新聞出版
2012-08-07