知られたくない、でも忘れられない過去がある――。
なぜ父は幼い自分を捨てて失踪し、死んでしまったのか――。母の四十九日を終えた岩崎俊也は、両親が青春時代を過ごした北海道の運河町へと旅立つ。二十年前、父はこの運河町で溺死してしまった。遺品となった1枚の古いモノクロ写真には、家族に決して見せたことのない笑顔が写っていた。事故の直前まで飲んでいた硝子町酒房の店主によれば、同じ法科大学漕艇部員だった彼の妻の密葬に参加するために滞在していたという。さらに父の後輩からは、昭和44年に漕艇部内で起きたある事件を機に、陽気だった父の人柄が激変してしまったことを知る。父は事件に関係していたのだろうか?家族にさえ隠し続けていた苦悩とは?死の真相に近づくにつれ、胸の内に膨らむ想い。果たして、父の過去を暴く権利が、ぼくにあるのだろうか……。ぬぐいきれない恥辱と罪悪感。嘘よりも哀しい、沈黙の真相とは!?
285ページ